UMAの真実

ネス湖のほとりに小屋を作って、ネッシーを四六時中観察している人がいる。少年の頃に見たネッシーが本当に存在することを世界に証明するためらしい。

そもそも今から1500年ほど前から目撃談が叫ばれているにも関わらず、今日まで捕獲には至っていない。様々に写真が捏造され、自然現象と誤解され、エンタメの材料にされる。それでもなお信じる人々の心の中にネッシーは今も居座り、人々の記憶を食べながら生き続けている。

 

あれはわたしが淫乱女子高生だった頃の話。昼休み、いつものように右手にリプトンの紙パックを、左手にバータイプのガラケーを持って出会い系サイトを漁っていた。当時のわたしは少しでも知名度のあるバンドマンと体を重ねることが最高のステータスだと思っていて、どの規模のライブハウスで、ツアーはどこに行っているのか、事務所に入っているのか、そういう基準で男性のペニスを測ることが普通だった。

そこで目に入ったのは、全国ツアーもしていて、それなりに広いライブハウスでのライブ経験があり、少し音楽の詳しい人ならよく知っている名前、という魅力的なプロフィール。わたしはその書き込みに飛びつき、自分がいかに若くあなたの要望に答えられるかというころを熱弁した。努力のかいあってわたしたちは授業が終わった後に会えることになり、新宿駅前で待ち合わせた。

メールの段階で、すでに他の人とは違うことに気づいていた。実際に会ってみると、その予感は的中した。この人、優しすぎる。熱弁した自分についての話はあまりこの人にとって重要ではないような気がした。なぜあのような、インターネットの下水道みたいなところにいるのか全く理解できないほど、純朴な青年だった。この人が作る音楽はどんな音楽なんだろうと、出会い系で出会った男性に初めて感じた。

ドブ臭いカラオケボックスに入ると、わたしはそのまま乳首を指先で弄ぶように部屋の電気を転がして消し、カラオケをつけて部屋をカモフラージュした。ごめんね段取り悪くて、今日会えると思わなかったから嬉しいよありがとう、みたいなことを言っていた気がする。下がる目尻は、ダムチャンネルの流れる暗い部屋でもすぐにわかるくらいにやっぱり優しかった。

膝にまたがりキスをする。そのままかちゃかちゃと彼のベルトを鳴らしながら解くと、ちょっとまって、と彼はわたしの手首を包むように掴んだ。

「僕のあそこ、マジで大きいんだ。ゴムも入んないかもしんなくて。」そう囁いた。

高校生にして経験人数を数えることをやめていた(諦めていた)わたしも、大きなペニスの一本や二本は容易に思い出すことができる。「俺のあそこ、めっちゃでかいでしょ」という言葉を添えて目の前に出されたそのペニスたちもたしかに大きかった。だからそれほど身構えずに、気楽な気持ちでチャックを下ろしたその瞬間だった。

彼のへそめがけてベッチーン!と当たったそれの太さは、ペットボトルくらいだっただろうか。長さも、わたしの手の付け根から肘くらいはあった気がする。馬並みとはこのことで、とにかく今まで見たことがないくらい、太くて長い。

今までの大きさとは明らかにレベルが違う。腰を抜かすかと思った。同時にちょっとした恐怖に苛まれた。この信じられないほど大きなペニスを、わたしは本当にこれから受け入れなければならないのだろうか。膝にまたがったまま見上げると、少し困ったような顔で、でもやはり優しい笑顔で微笑む彼。人生一度きり、こんな化け物級に出会うことそうそうないぞ。そう言い聞かせ、わたしはそのペットボトルほどの大きなペニスを受け入れることにした。

少し腰を浮かして、わたしの入り口に彼のはち切れそうな先っぽをあてがう。その時点で「あ、これは無理かもしれない」と悟った。赤ちゃんの靴下に大人の足を無理やりねじ込むような感じ。絶対にサイズが合ってないのだ。たしかに膣という器官は非常によく作られていて、入って来た異物を皮膚全体できちんと受け入れられるような構造になっている。でもわたしはこの時、膣にも規格サイズがあるのだと知った。あの化け物級に合う規格サイズが存在するのかが謎だけれど。

 

実は記憶がここで止まっている。それ以降どうしたのかを、もうずっと思い出すことができない。入れたような気もするし、入れてないような気もする。よく考えると手慣れた手つきでカラオケの電気を消してダムチャンネルをつけたのは全部彼な気がするし、そもそもあんなところで出会った人が本当にあんなに優しかったのかも分からなくなってきた。

もしも彼に街ですれ違っていたとしても、絶対に気づかない。結局なんのバンドで何を担当していたのかわからなかった。それにもう顔を忘れてしまった。優しく下がった目尻とは概念でしかなくて、そもそも目がどんな形だったかを思い出すことなんてできない。人に話しても「絶対嘘だよ」「そのちんこの大きさはありえない」のオンパレードだ。でもわたしの前頭葉が、まぶたが、そして膣が、はっきりと覚えている。人間では到底ありえない大きさの、チャックの隙間からにょきにょき生えてきたネッシーを、わたしは絶対に目の前にしているはずなのだ。