西片例の、

スプーン一杯のノンフィクション

明日1日だけ展示する作品についてーー隣のあの人

その人を、その人だと定義するものとは結局なんなのだろうと思っている。

 

わたしは人口比でいうとややマイノリティな出自を持って生まれた。20歳を過ぎてから周りに公表するようになったので、それ以前に出会った人たちはこの事実を知らないことが多い。
日常生活にあまり支障はないが、出自のことはどこかで常に意識してきたように思う。公的機関に行けば、まずこのマイナーで少しだけネガティブな肩書きのフィルターを通された前提で話をされる。その時に改めて、この国においての自分の立場に改めて気づかされる。

バックボーンを全く知らない人と出会って関係を構築することに興味があり、修了制作では出会い系サイトで多くの人と出会った時の記録映像を展示した。

詳細は以下

 

leinishikata.hatenablog.com

 


わたしは、「その他大勢」に憧れていた。

 

しかし、たとえば群衆の誰をピックアップしても、皆どこかでマイノリティな部分を持っているだろう。
だから、アノニマスな誰かが個別を特定する何かになるものとは、対して好きでもないような、いつもつきまとう日常に潜んでいるのではないかと思う。


カフェで横に座ってコーヒーを飲み始めた会社員たち。電車の席の目の前で話し始めた女子高生。切符を買う列で後ろに並んだおばあさんたち。
側にいる知らない人から、他愛もない話が自然と聴こえてくることがある。「店長がかっこいい」「担任が嫌いだ」「孫がこんなに大きくなった」。無防備に語られる生活。彼らからことばとして発せられた日常が宙を舞った瞬間、その一片から背景にある生活に思いを馳せてしまう。残念ながらやがて喧騒に消えてしまい、全貌を望むことができないのだが。

「となりの砂場」と名付けた今回の作品は、偶然隣に居合わせた人のこぼれた生活をかき集め、配布する作品である。
今隣に居る知らない人も、わたしと同じように息をして、住居を持ち、ご飯を食べて生活をしている。隣の人の唇から発せられた生活が空気に溶けてしまった瞬間の上澄みだけすくって、陽の光に透かして眺めていたい。

 

藤倉麻子と、わたし西片例は「穴塞ぎ」という展示を明日、1日限りで行う。
わたしは、キャットストリートの裏で1日限り、隣の生活の断片を、少しずつ分けて切り売りする。

 

※東京女子エロ画祭にノミネートされた「曇り越しの彼女たち」も同時に展示します。

 


藤倉麻子・西片例 二人展
穴塞ぎ

2018.03.18 Sun.

東京都渋谷区神宮前6-15-10(建物内の小さなガレージスペースです。開けているのでわかると思います)
Open 13:00 Close 21:00
Artists 藤倉麻子 西片例
入場無料
https://www.facebook.com/events/1812381308793446/