西片例の、

スプーン一杯のノンフィクション

諦めをひろった日

アニメや漫画の世界に出てくるような、「清らかな」小学校に通っていた。女の園。着崩すことを許されない、揃った制服。朝と夕方、そして食前食後の長い長いお祈りを淡々とこなし、週に2回は聖堂。先生にタメ口などもっての他で、通り過ぎる際には「こんに…

UMAの真実

ネス湖のほとりに小屋を作って、ネッシーを四六時中観察している人がいる。少年の頃に見たネッシーが本当に存在することを世界に証明するためらしい。 そもそも今から1500年ほど前から目撃談が叫ばれているにも関わらず、今日まで捕獲には至っていない。様々…

小さきものたちの夢

部屋の中で、小動物を飼っている。部屋に迎え入れるのは、子猫や子犬、うさぎやモルモット、ヒヨコに毛虫と、毎回ちがう、小さくてもこもこした動物だ。それを優しく両手で包んで、使っていないタンスの引き出しに入れてやる。床下、ベッドの下の隙間などの…

わたしのあそこ

動物に噛まれる夢を見て目が覚めた。股間がひりひりするのと同時に、熱を持ってメチャクチャかゆい。寝ている間にものすごい掻いてしまったみたいだ。抜け殻みたいに安物のショーツが足をつたってするりと抜けた。少し前にもこんなことがあった時に買ってお…

わたしたちの冒険

久しぶりに会ったミサキは、人の蒸気が絡みつく新宿の雑踏に紛れていてもすぐにわかった。だって驚くほど何も変わっていなかった。短く切った髪、さっぱりしたメイク、個性的なワンピース。 わざわざ休みを合わせて会うほどの仲ではなかったけれど、ひとつ下…

半分の夜

子供の時母から一人用の敷布団が与えられてから、わたしにとって夜とはずっと一人のものだった。 たとえ家ではない場所で同じ布団を誰かと分かち合って、その下で互いの手が触れ合っていたとしても、その夜を誰かと分け合っているという意識は感じたことがな…

記念品

休み時間。教室から少し離れた先にあるトイレは、花のような香りとほのかな酸っぱい匂いが立ち込めていた。鏡の前では、無数の女の子たちが所狭しと並んで化粧を直している。ブラウスの肩と肩が少しずつ触れ合うその隙間に、わたしはいつものように体を斜め…

ティッシュの眼差し

鈍い赤青緑のつぶつぶが、ぽつり、またぽつり、と光り始めるのと同時に現れた居酒屋と風俗のキャッチから逃れるように進む。下を向きながら歩くと、様々な発見がある。横断歩道は剥げてくるとごましおみたいに見えること。ネズミが昔より増えたこと。吐瀉物…

ほぐせぬまま

高校生の時も、なにかと気を使う場面が多かったと思う。友達付き合い、彼氏の前、親や先生の前。あとあの頃はコンビニでのアルバイトも始めたおかげで、大人と接する機会が多くなった。突然の大人扱いは少し嬉しくもあり、疲れるものでもあった。 だから近所…

証人

以下の記事の続編です。前半に書いてある話の詳しいことは、この記事に書いてあります。 leinishikata.hatenablog.com 風が当たりすぎるあのカフェは汗を一瞬で奪って行ったはずなのに、再び噴き出した汗がTシャツに染みを作っていたのを見て、この世界で実…

0.03mm

今や0.01mmが登場しているのだから、すごい時代である。でもやはり自分としては0.03mmくらい厚さがある方が安心できる。コンビニに行けば必ず置いてあるし、いざという時でも大丈夫。欲しい時にすぐ買える。 喉がからからで目が覚めた。狭いシンクに向かって…

陰日向

今週のはじめ。空気のこもり気味な部屋で、何日か前に作り置いていたカレーを温めていた。 冷やご飯もせっかく温めていたのに、ラップを取って少し浅すぎるお皿に盛り付けると、すぐに熱が奪われてしまった。冷蔵庫の中で眠っていたカレーは、少し固くなって…

まだ見ぬ坂道の果て

久しぶりに歩く道玄坂は、とてつもなく長い道のりに感じた。2018年の夏はもうすぐそこまで来ているようで、待ちきれずに翳りのある坂の隙間から丸く小さい光をゆらゆらとこぼしている。平日だというのに、渋谷という街はどこもかしこも若い人だらけで、人と…

わたしのなりかけのもの

桃、メロン、デコポン。人は乳房を果物に例えたがる。かぶりつきたくなってしまうからか。溢れ出た最後の一滴さえも飲み干してしまいたいからか。 わたしには乳房が無い。小さいのではない。シャワーで、更衣室で、ベッドで、わたしの裸を見たことがある人は…

バスに乗って

先週も会社で、あいも変わらず下っ端業務をこなしていた。雑用係は嫌いではない。余計な責任を追わなくてもいいから。でも、せっかく入ったので早くここから脱却したい気持ちもある。なにか大いなることをして、周囲のひとをあっと驚かせてみたい。会社の人…

NOW ON AIR

わたしの席は、うしろにラジオがある席だ。 下っ端のわたしは、毎朝一番早く会社に来てラジオにスイッチを入れる。突起物を指で軽くぽんと押してしばらくすると、息を吹き返したように爽やかな時間を一気に奏で出す。それまで静まり返っていた部屋は、一気に…

忙しなさの果てに

年度初めの1週間はとにかく忙しかった。入社して間もない中で様々な現場を経験できたのはありがたかったが、オシャレなインテリアを置く計画をしていたわたしの8畳の城は、もはや寝る為だけの箱と化した。それでも文化的な生活を営むための最低限の家事は…

粥の味

学生最後の一人旅でニューヨークを選んだことに特別な理由はなかった。しばらく長い遠出はできなそうなので、まだ行ったことのない遠くの土地を踏んでみたい。そんな軽い気持ちだった。でも、加えてわたしには28歳になるまでにもしニューヨークに行く機会が…

シェイプ・オブ・ウォーターを見て思い出したこと

NY行きの飛行機の中で、「シェイプ・オブ・ウォーター」を観た。耳の聴こえない女性と半魚人のラブストーリーとのことで、胡散臭い話だなと思っていたが、随分話題になっていたので気にはなっていた。感想としては、良かったとか悪かったというより、なんだ…

あたらしい街で

知らない街で一人暮らしを初めて、1週間が経つ。 26年間当たり前のように東京で呼吸してきたわたしは、自分で生活を始めてみて色々なことを知った。 カーテンがないと窓際は寒いということ。 ガスは立会いのもと申し込みをしなければ使えないということ。…

明日1日だけ展示する作品についてーー隣のあの人

その人を、その人だと定義するものとは結局なんなのだろうと思っている。 わたしは人口比でいうとややマイノリティな出自を持って生まれた。20歳を過ぎてから周りに公表するようになったので、それ以前に出会った人たちはこの事実を知らないことが多い。日常…

つよいということ

学部4年の時所属していた研究室が設立10周年を迎えたため、記念パーティーが行われるとの知らせを受けた。 基本的にこのような催し物がある場合大体全部足を運ぶが、今回ばかりは迷った。 専攻していた建築・空間デザインに全く興味がなくなってしまい、…

決断はいま

まだ厳しい寒さの残る頃、実家を出ることが決定した。物件情報アプリを複数インストールし、暇さえあれば新着物件をパトロールする日々に明け暮れていた。 この時期、物件の数は特に多い。毎日毎日新しい物件が更新されて行く。希望の新居のエリアを特にどこ…

東京の洗礼

人混みをうまくすり抜けるねと言われるような、生粋の都会っ子として育った。 みんなの故郷の近所には、その地特有の澄みきった空気とか、悲しいことがあると自転車を走らせて向かう海とか、縁側で野沢菜を漬けるおばあちゃんの家があるらしい。 わたしが育…

藝大生の藝大コンプレクス

高校生の時、何にも目標がない毎日の中で、深夜たまたま見ていたCDTVという番組のステージセットに感動して、「絶対これを作る人になりたい」と思った。どうやらその職業はセットデザイナーと呼ばれているようで、芸術系の大学に行くとなれるらしかった。ど…

沈んだかけらを探してる

修了制作で「女の子が出会い系アプリで出会った数人と過ごした時間を記録した映像」を発表したが、この作品内でたくさんの男性と出会う主人公の女の子の名前を「イルカちゃん」としていた。 「イルカ」かつてのわたしの名前である。 16歳だったわたしは、ク…

そこに線がほしいか

もし本当に人間が平等ならば、この世界に引かれる線など存在しないだろう。でも現実では、地球に線はたくさん引かれている。それは区別か?それとも・・・ 先週の土曜日、クリエイター界隈の大きな新年会と銘打った交流会が開催された。私は去年も参加してと…

捨てられない変えられない

今日、外でiPhoneを弄んでたら、誤ってアスファルトに落として画面にヒビを入れてしまった。2年以上大事に大事に使ってきたiPhoneは少し誤作動が多くなってきたので、そろそろ中古で新しいものでも買ってこいつは売ろうかなと思っていた。その矢先に、私のミ…

愛することは憎むことかもしれないけど、憎むことは愛することではないかもしれない

ツイッターのTLで思い出深い曲をシェアしている人を今日も見かけてしまった。 もう何年も聴いていないその曲のタイトルを私はつい見てしまうのだけれど。 去年の暮れあたりから、昔付き合ってた人がinstagramのストーリーをのぞいて来る回数が多くなったこと…

展示を終えて

修了制作展(ずっと卒業制作って言っちゃってた)が14日、終了した。このブログを読んでわざわざ来場してくださった方もいらしたようだった。ちゃんとご挨拶できなかった。本当にありがとうございます。いい意見も悪い意見もなんでもいいので、とりあえず意…